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古事記のお話

「古事記」は日本最古の歴史書であると言われています。
歴史書といってもそこに登場するのは、現在日本の神社で祀られている神様たち。

文学的な価値も高く、神道を中心に日本の文化の根幹に大きな影響を与えています。

 

三輪神社にまつわる物語の原点も「古事記」や「日本書紀」に描かれる日本神話にあります。
奔放で時に荒唐無稽な彼らの物語はとても魅力的。

 

「星野くん」のお話には、この物語の要素がたくさん取り入れられています。

このページでは数あるエピソードの中から、特に本編に関係が深いものを紹介します。



 

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​星野くん編
​根の国編
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 星野くんの先祖?!

「因幡の白うさぎ」

 

 その昔、一羽のうさぎが沖の島に住んでいました。
うさぎは岬へを渡るために海のワニ(サメ)を騙すことを思いつきます。
「おい、ワニよ、私と君と、どちらの一族が多いかを数えてみようじゃないか。
 仲間をありったけ連れてきて、海の上に一列に並んでおくれ。
 私はその上を跳んで数えてあげるから。」
それを信じたワニ達は島から岬までずらりと並んびました。
うさぎはその上を跳んで渡り、最後の一匹まで来たときに
「バカな奴らめ、お前達は騙されたのさ。」
とうっかり口を滑らせ、怒ったワニに毛皮を剥がされてしまいました。

うさぎが泣き悲しんでいると、因幡のヤガミ姫に求婚にいく大勢の神々が通りかかりました。
彼らは「海水を浴びて風に当たって寝ていれば治る」と言うので、そのとおりしたところ、
ウサギの体はますます傷だらけになってしまいました。

 

最後に、大きな袋を背負って通りかかった大国主神は
「川の水で体を洗って、蒲黄(がま)の花粉を敷き散らしてその上に寝転べば、体はきっと治るだろう」
と指示し、そのとおりにしたところウサギの体は元通りになりました。

うさぎは、大国主神に
「あの大勢の神様たちは、ヤガミ姫と結婚できないでしょう。家来のように袋を背負っていますが、あなたこそヤガミ姫と結婚できるお方です。」
と告げます。

そして後に大国主神はうさぎの言う通りに、ヤガミ姫と結婚したのです。

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昔々、倭迹迹日百襲姫(やまとととびももそひめ)という姫がいました。
 

姫は大物主神と結婚しますが、彼は夜にしか姫のもとを訪れません。

あるとき姫は「私、貴方のお顔をもっとはっきり見たいわ」と、夫にお願いしました。

それはもっともな事だと思った大物主は言いました
「私はこれからお前の櫛を入れた箱の中入る。
 朝になって、箱を開けても決して驚いてはならないよ。約束してくれるね?」

 

姫は不審に思いながらも、言われた通り次の朝箱を開けました。
するとそこには小さな蛇が入っていました。驚いた姫は悲鳴を上げてしまいます。
蛇はたちまち、麗しい男性に姿を変え、
「お前は約束を破ったね。私はもう二度とお前とは会えないよ 」
と口惜しそうに言い残すと、大空を翔けて三輪の山に帰ってしまいました。

 

男の正体を知った姫は大変後悔し、自ら命を落としてしまったということです。

 

 大物主神の変身

「箱の中の蛇」

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 元祖運命の赤い糸?

「残った三勾の糸」

 

 これもまた、昔々のことですが、活玉依姫(いくたまよりひめ)という美しい乙女がいました。

 

毎夜、彼女のもとに一人のたいそう麗しい若者が訪ねてきます。

二人はたちまちに恋に落ち、しばらくして姫は身ごもります。

姫の両親が訪ねてみても、彼女は若者の素性を知らないというのです。

娘を心配した両親は、今度若者が訪ねてきたら、床に赤土をまき、糸巻きの麻糸を針に通して若者の衣の裾に刺せと教えます。

 

若者が訪ねてくると、姫は言いつけ通りその袖にそっと針を刺しました。

翌朝、若者が帰った後に残っていた糸巻きは、三勾(みわ)だけでした。

辿ってゆくと、糸は三輪山のふもとの「おだまき杉」と言われる杉の木の下まで続いていました。

こうして若者の 正体が大物主神であり、お腹の中の子が神の子だと知るのです。

 


この時に糸巻きが三巻き(三勾)残っていたことから、この地を美和(三輪)と名付けたということです。

 

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 知恵の神クエビコの話

「名も知らぬ神」

大国主大神が出雲の美保岬にいたとき、ガガイモ(植物の名前)の船に乗って蛾の皮で作った服を着た小さな神様が海の向こうからやってきました。

 

大国主はその神に名前を尋ねましたが 、答えませんでした。

そこでは 大国主は従っている神々にその神の名を尋ねましたが 誰も知りませんでした。

すると、一匹のヒキガエルが言いました。

「この世のことなら何でも知っている、久延毘古(クエビコ)ならきっと、この神さまの名前を知っていますよ。」

 

そこで、久延毘古という者を呼んでみたところ、彼は歩くことが出来ないというのです。大国主が久延毘古の元へ行ってみると、この神は山田の案山子の姿をしていました。

久延毘古は「これは神産巣日(カミムスビ)神の子供、 小名毘古那(スクナヒコ)神です」と答えました。

 

案山子は田の中に立って一日中世の中を見ているので、天下のことは何でも知っているのです。

 

その後、大国主大神は小名毘古那と協力してこの国を作り始めました。
 

 国造りのつづきを

「大国主と大物主」

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大国主神は小名毘古那と協力して国を作っていましたが、

国造りが終わる前に小名毘古那は、また海のむこうの国に帰ってしまいました。

大国主神は困ってしまいました。
「私は一人でどうやってこの国を造ったらいいのだろう。
 誰か私と一緒に国造りのつづきをしてくれる神様はいないかな。」

すると、海の向こうから光り輝く神様が現れて、こう言いました。
「私を丁寧に祀れば、私は貴方に協力して一緒にこの国造ろう。
 しかしそうしないならば、この国を立派に造ることはできない。」
そこで大国主は、
「では、どうやって、貴方をお祀りすればよろしいのでしょうか。」
と尋ねると、その神様はこう答えました。
「私を、大和の国の青々とした山々の東の山の上に祀りなさい。」
この東の山が、三輪山(奈良県)です。
そして、そこに大神神社を立ててお祀りした神様が大物主神です。


 

さて、大国主神がは大物主神に
「ところで貴方は一体どういった方なのですか?」と聞きました。
すると大物主神は
「私は貴方の幸魂(さきみたま)奇魂(くしみたま)なのですよ」と答えたといいます。

 

ですから、三輪神社でお参りするときは、二礼二拍手に加えて、

祈りの言葉(鎮魂詞)として、

「幸魂(さきみたま)奇魂(くしみたま)守給(まもりたまえ)幸給(さきはえたまえ)」と三度唱えるのです。

 

おまけ

神様のいろいろな面

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神道では「一霊四魂」といって神には、

 

和魂(にぎみたま)幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)

・荒魂(あらみたま)

 

の四つ面があるとされています。

 

和魂は、雨や日光の恵みなど、神の優しく平和的な側面で、神の加護は和魂の表れであると考えられています。

幸魂は運によって人に幸を与える働き、収穫をもたらす働き。

奇魂は奇跡によって直接人に幸を与える働きのことです。

 

一方、荒魂は神の荒々しい側面。

天変地異を引き起こしたり、病を流行らせたり、人の世を乱す働きをします。

これが、いわゆる神の祟りです。

 

 

 

 

 

 

今では日本の古典、神話である「古事記」ですが、その昔は「史実」を記した歴史書であり、

時の政権の正当性を示す重要な書物でした。

そのため政権が変わる度に改変が繰り返され今に伝わる形になった可能性が高いと考えられています。

 

当時の人々が何を思い、どんな思惑をもって物語を造り上げていったのか。

歴史的観点からみても「古事記」は魅力的な書物なのです。

 

 

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 神様の離婚騒動!?

「黄泉の国へ」

昔々、まだこの国の形すら無かった頃、イザナギという男の神とイザナミという女の神が生まれました。

2人は夫婦となり、日本の島々と多くの神を生みました。

そして火の神を生んだ時、イザナミは火傷を負って死んでしまいます。

イザナギは妻のことが忘れられず、黄泉の国(よみのくに、死者の国)まで行って彼女を連れ戻そうと考えました。

 

黄泉の国の戸口を挟んでイザナギは

「愛しい我が妻よ! 

 わたしたちの国はまだ出来ていない。 だから一緒に帰ろう!」 

と言いました。 するとイザナミは 

もう黄泉の国の食べ物を食べてしまったので現世には戻れません。 

 でも、せっかく会いに来てくれたのだから 黄泉の国の王に相談してみます。 

 その間、決して覗かないで下さいね」 

と言いました。

 

イザナミがなかなか戻って来ないので、イザナギは待ち切れなくなり、そっと戸口を開けて中を覗いてしまいました。

するとそこには、腐りかけて蛆が湧き、恐ろしい雷神に取り付かれたイザナミの姿があったのです。

イザナギは恐れをなして逃げ出しました。

これを見たイザナミは

「あれほど覗くなと言ったのに!

 よくも私に恥をかかせましたね。」

と大変怒り、醜女(しこめ)にイザナギを追わせました。

 

イザナギは必死で逃げ、とうとう黄泉比良坂(よもりひらさか、死者の国とこの世を繋ぐ入り口)まで辿り着き、

その入り口を大きな岩で塞ぎました。

追いついて来たイザナミは岩越しに、

「愛しい私のイザナギ。 

 こんなことをするのならば、あなたの国の民を

 毎日1000人殺しましょう」 

と言いました。 するとイザナギは 

「愛しき私のイザナミ。 

 あなたがそうするならば、 毎日1500人生まれるように

 しよう」 

と言いました。 

 

こうして2人は別れ、地上では毎日1000人が死に、

1500人が生まれるようになったのです。

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 身体を洗って生まれた神様?!

「スサノオの誕生」

黄泉の国から帰ったイザナギは、穢れ(けがれ)を払おうと川で禊ぎ(みそぎ)をしました。

イザナギが身体を洗うとたくさんの神々が生まれました。

 

そして最後に、

天照大御神(あまてらすのおおみかみ)、月読命(つくよみのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)

の三人の兄弟が生まれました。

 

イザナギは大変喜び、姉のアマテラスには太陽の神として高天原(たかまがはら、天空の神の世界)、

兄のツクヨミには夜の世界、そして弟のスサノオには海原を治めるように言いました。

しかし、スサノオは大人になっても泣き喚いているばかりで少しも国を治めようとしませんでした。

それどころか、凄まじい泣き声に山は枯れ、海や川は干上がり、次々と災いが起こりました。

 

そこでイザナギノが、

「なぜお前は、命じた国を治めないで泣きさわいでいるのだ。」

と尋ねると、スサノオは、

「わたしは、母のいる黄泉の国へ行きたくて、泣いています。」

と答えました。イザナギは、たいへん怒り、

「ならば、お前はこの国から出てゆけ!」

と、スサノオを海原の国から追いはらってしまいました。

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 困った末っ子

「二度目の追放」

海原の国を追われたスサノオは、母に会い黄泉の国へ行くことにしました。

そのことを姉のアマテラスに伝えようと天空の高天原に出かけました。

 

アマテラスは、「乱暴者の弟はわたしの国を奪いに来たに違いない」と思い、勇ましく男装して彼を迎えました。

「お前はどういう訳で上って来た!」

「黄泉の国へ行く前に姉さんに挨拶しに来ただけだ。謀反の心などない。」

「お前の潔白をどうやって証明するのだ」

「誓約を立てて女の子を生んでみせよう」

 

アマテラスとスサノオはお互いの持ち物から次々と神を生み出しました。

スサノオの持っていた剣からは、言葉通り3人の女の神が生まれました。

アマテラスは納得し、スサノオを自分の国へ入れてやりました。

 

ところが、調子に乗ったスサノオは、先の言葉とは反対に高天原で暴れ回りました。

神殿にうんこをまき散らしたり、田んぼをめちゃくちゃにしたり、果ては機織り小屋に馬の死骸を投げ込んだので、機織り娘がショックのあまり死んでしまいました。

 

初めは多めに見ていたアマテラスも、弟のあまりの悪行に恐れをなし、天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまいます。

すると世界は暗闇に包まれ、災いがはびこりました。

 

光がなくなって困った神々は、アマテラスに岩戸から出て来てもらおうと祭を行います。

(このエピソードは古事記のなかでも人気がありで様々な

 芸能の題材にもなっています)

 

祭の賑やかさが気になって、頑に閉じこもっていた

アマテラスも遂に岩戸から出て世界に明るさが戻ったのでした。

 

 

さて、一大事件の発端となったスサノオは、髭を切られ、爪を剥がされて地上へと追放されてします。

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 スサノオの武勇伝

「八岐大蛇退治」

地上にやって来たスサノオは、女の子を抱いて嘆き悲しんでいる老夫婦に出会いました。

訳を尋ねてみると、八岐大蛇(やまたのおろち)という怪物が毎年一人ずつ娘を喰らいにやって来るというのです。

大蛇の目はホオズキのように赤く、身体が一つに、頭と尾が八つずつ、さらにその身体は八つの谷と八つの峰に及ぶほどだと

老人は言いました。

 

「わたしたちには8人の娘がいたが、残っているのはこの櫛名田比売(くしなだひめ)だけだ。

 この子も明日には大蛇に食べられてしまう。」

「その娘をわたしの妻としていただけないだろうか?

 わたしはスサノオと言って、アマテラス大御神の弟だ。今しがた天からおりて来たのだ」

「なんと恐れ多いことだ!よろこんで娘を差し上げましょう。」と老人は快諾しました。

スサノオは娘を櫛に変えて髪に差し、

老夫婦に八つの桶になみなみと酒を注いで家の周りに置くように言いつけました。

 

老夫婦が言われたとおりにして待っていると、

八岐大蛇がやって来ました。

酒に目がない大蛇は、八つの桶に八つの頭を突っ込んで、ぐいぐいと飲み干しました。

 

大蛇が酔っぱらって眠り込んだ隙に、スサノオは剣で切り刻んで退治しました。

そして大蛇の尾を切り裂くと、一本の立派な太刀が現れたのです。これが後の物語に登場する「草薙の剣」(くさなぎのつるぎ)です。

 

 

スサノオは櫛名田比売を妻に迎え、出雲の国に神殿を建てて暮らしました。

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 娘はやらん!

「スサノオVS大国主」

大国主神は、ヤガミヒメと結婚したことで兄弟の神々に妬まれ、命を狙われていました。

そこで、スサノオの知恵を借りようと根の国(死者の国?)へとやって来ました。

大国主神はスサノオの娘、須勢理毘売(スセリヒメ)と恋に落ち、二人はすぐに結婚してしまいます。

しかし、この結婚が気に入らないスサノオは、大国主神を蛇がうごめく部屋に閉じ込めます。

スセリヒメは大国主神に神聖な布を授け、 

「蛇が食いつこうとしたら、この布を三回振って追い払ってください」

と教えました。 おかげで大国主神は無事に部屋を出ることが出来ました。

スサノオは今度は鏑矢(かぶらや、音が鳴る矢)を野原に放ち、これを拾ってくるよう大国主神に命じました。

そして、大国主神が探している間に原っぱに火を付けました。

 

大国主神が困っていると、一匹のネズミがやってきて

こう言いました

「外はホラホラ、中はズブズブ」

地面を踏みしめてみると、下に空洞があり、大国主神はそこに隠れて火をやり過ごすことが出来ました。

ネズミが鏑矢を見つけて来て、渡してくれました。

試練を乗り切った大国主を見て、スサノオは満足し寝てしまいます。

 

この隙に、大国主はスサノオの髪を神殿の柱に結びつけ、スセリヒメと太刀と弓と琴を担いで逃げ出しました。

しかし、うっかり琴が木に当たって大きな音を立ててしまいます。

目を覚ましたスサノオはカンカンに怒りますが、髪をほどいている間に二人は遠くへ逃げさっていました。

 

スサノオは

「持っていったその太刀と弓で兄弟神を打ち倒し、

 スセリヒメを妻として立派な宮殿に住め!この野郎!」

と言って悔しがりました。

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 おまけ

「神様の住む異世界」

古事記では私達人間の暮らす地上は芦原中国(あしはらのなかつくに)と呼ばれています。

そして神々の住む天上の世界が高天原(たかまがはら)。

地下にあるのが根の国と死者の世界である黄泉の国です。

芦原中国と黄泉の国とは黄泉比良坂(よもつひらさか)という所を通して繋がっています。

 

根の国=死者の国かというと、実ははっきりしません。

根の国は生命や富の根源の地(=根の国)であり、本来は明るいイメージの世界だったという考え方もあります。

また地下ではなく海の底に存在するとの説も。

高天原
​神山・霊山
常世の国
根の国
黄泉の国
海郷
芦原中国

神様は海の向こうの常世の国からもやって来ます。

そして海の中にも海郷(わたつうみ)という海の神々が住む世界が登場します。

ここでは鯛やヒラメが舞踊り、浦島太郎が訪れる竜宮城とそっくりです。

 

地上にも、大物主神の三輪山をはじめ、神々の住む神山・霊山とされる山が数多く存在し信仰を集めて来ました。

こうした場所も人間が安々と踏み入ってはならない異界でした。

 

 

 

古代日本の世界観では、あの世とこの世、人の世界と神や死者の世界との境界はとても曖昧なものだったと考えられています。

日本人は自然の中のあらゆるものに神を見いだして来ました。

そして、死者は死んでどこかに行くのではなく、目に見えない存在になって自然の中に存在すると考えました。

 

古事記が書かれた時代、実は神の世界は人間の世界と重なり合い、ずっと近い所にあったのかもしれません。

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